私たちの会社という意味を表す熟語に「弊社」「当社」という言葉があります。今回はこの「弊社」と「当社」の意味の違いと使い分けについてまとめてみます。
「弊社」と「当社」では「弊社」の方が丁寧な表現
「弊社」「当社」、どちらも「私たちの会社」という意味であることには変わりありません。ただ、「弊社」という熟語には自分を下げて相手を高める意味があるので、「当社」より丁寧な表現であると言えます。
「弊社」と「当社」では
「弊社」の方がへりくだっているので、より丁寧な意味になる
お客様に自分たちの会社のことを伝えるときは「弊社」を使う方が丁寧な表現になります。ただ、「当社」という言葉に不遜な意味があるわけではありませんので使ってはいけないということではありません。
「弊社」と「当社」の使い分け、覚え方
弊社の「弊」という字を使う熟語をいくつか挙げてみましょう。
疲弊、悪弊、
旧弊、語弊
弊衣
それぞれの熟語から伝わってくる印象に、どんなイメージを抱かれましたでしょうか? 弊衣とはボロボロになった衣服のこと、疲弊とは疲れ切った身体のこと、悪弊とは悪い習わしのこと。そう、それぞれ、弊という字のついた熟語にはマイナスの印象があることがわかります。弊という字は訓読みでは「弊(つい)える」で、ひどく減る・無駄に使われる・ダメになってしまうなどの意味があり、やはり同様に「減っていくイメージ」を浮かべることができます。
「弊社」の「弊」という字は減っていくイメージ。自分自身の立場・高さが相手と比較した場合に減る(低くなる)ので、弊社という言葉には謙譲の意味があると覚えておけば思い出しやすくなります。連想記憶法としては、「疲弊=身体が疲れているマイナスのイメージ=弊社は自分の立場が低い」でいかがでしょうか。
「当社」を使った方が良いケース ~毅然な態度で臨むときは「当社」
ここまでの説明で「弊社」という言葉には、謙譲の意味があることがわかりました。それでは「当社」という言葉はどういうときに使えば良いのでしょうか。
「当社」という言葉には相手を高める意味はなく、
単に「自分の会社」という意味だけを表す。
=毅然とした態度(抗議のとき)などは「当社」を用いる
「当社」という言葉にはへりくだる意味はなく、相手と対等な立場であることを表します。したがって、会社として、毅然とした態度で先方に抗議を行う場合などは相手を高める必要はありませんので「当社」という言葉を使った方が良いでしょう。また、同じ会社の社員同士で会話をするときも、やはり「当社」を使うほうが自然です。
今回は「弊社」「当社」の使い分けについて説明しました。「うちの会社」という表現をわざわざ「弊社」としてフォーマルな印象を与えることもできますが、一方で、フォーマルすぎる言葉の選び方はお客様に必要以上に距離感を与えてしまう可能性があります。表現力、そして商売の在り方としては、相手に臨機応変に対応することが何よりも大切な心遣いであると考えていますので、教科書に縛られ過ぎることのないコミュニケーションを図っていただければ幸いです。
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