「高い席から失礼かと存じますが」「僭越ながら」と言ってはいけない理由 ~挨拶やスピーチで注意すること
壇上、スピーチなどを頼まれた人がよく「高い席から失礼します」という挨拶をされるのを聞く場面がありますが、これはあまりに不遜な表現。
なぜ「高い席から失礼かと存じますが」は不遜な表現になるのか
謙遜の意味で「自分のような人間がこのような高い位置からご挨拶を申し上げますのは…」と言うのは、ほかの人たちが低い席にいると言っているのと同じことになってしまいます。高い・低いのように、対になる表現がある言葉を慣用的に使うと、相対的な相手の地位の低さなどを認めてしまうことになるので注意が必要です。
簡潔に「ひと言ご挨拶させていただきます」という言い方で始めるのであれば問題ありませんね。
「僭越ながら」も不遜な表現になりがち
僭越ながらという表現も注意が必要です。
「僭越ながら」とは身分や権限などを越えて、差し出がましいことをすること
謙虚さを示す表現、この言葉は「本来自分がここで挨拶をするべき立場ではないのだけれども」という意味になります。しかし、実際はスピーチや挨拶をされる方は、それ相応の立場・肩書きであることがほとんどなのです。
会社創立50周年パーティーの席で、その創業者や社長を差し置いて、昨日入社したばかりの社員さんが挨拶をされるのであればこの表現は使っても構いません。しかし、会社を代表するような、当然に挨拶を行うべき立場の人間がこの表現を使うことは、聞き手に対して不遜な印象を与えます。
「せんえつ」という音の響きから「ご出席の皆様より、先にご挨拶を」「皆様の順序を越えてご挨拶を」というニュアンスで勘違いされることも多いようですが、「僭越ながら」という表現は、あくまで自分の立場・身分に照らし合わせて使う表現。かえって自分の威光を示すだけの嫌味な使い方になってしまわぬようお気を付けください。
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