「秋味(あきあじ)といえば秋刀魚だよね」という表現が誤りである理由 ~秋味とは
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140文字で変わる表現力 秋刀魚, 秋味, 誤用, 鮭
秋刀魚や栗、芋やキノコなど様々な食材が美味しく感じられるようになる季節、秋。
ところで、秋の味覚を「秋味(あきあじ)といえば秋刀魚だよね」という風に表現することがありますが、これは誤用です。秋味とは何のことなのか、確認しておきましょう。
秋味とは鮭(塩ザケ)のことを指す!
秋味とは秋刀魚や栗のことではなく鮭(塩ザケ)のことをいいます。俳句の世界で「花」といえば「桜」のことを指すように、秋味とは鮭(サケ)を意味します。「秋の味覚」という意味で秋味という言葉を用いると、冒頭のような誤用になってしまうのでご注意を。
秋味とは鮭(塩ザケ)のことを言う。「秋味=秋の味覚」という意味で用いるのは誤り
余談ですが「秋刀魚(サンマ)」の漢字表記は大正時代以降に行われるようになりました。
サンマは古くは「サイラ(佐伊羅魚)」「サマナ(狭真魚〉」「サンマ(青串魚)」などと読み書きされており、また、明治の文豪・夏目漱石は、1906年(明治39年)発表の『吾輩は猫である』の中でサンマを「三馬(サンマ)」と記している。これらに対して「秋刀魚」という漢字表記の登場は遅く、大正時代まで待たねばならない。
引用元:サンマ – Wikipedia
言葉は変化するものですが、秋刀魚という漢字の登場からまだ百年も経っていないというのは不思議な感じがしますね。
鮭(サケ)は実は白身魚だった! 季節外れの鮭のことは時不知(トキシラズ)と呼ぶ
身の赤い鮭は赤身魚のような印象がありますが、実は白身魚。エビやカニを餌にしているうちに身が赤くなっていくのだそうす。
秋の産卵の頃に日本の川を上る鮭(=白鮭)のことを秋鮭、秋味と呼びますが、初夏の頃に取れる鮭はシーズンを外れているため「時不知(トキシラズ)」と呼びます。秋という季節を知っている鮭のことは秋味、タイミングを外した鮭のことを時不知(トキシラズ)と呼ぶのも、いかにも四季のある日本独特の表現であると言えそうです。
秋に関する言葉のあれこれ「天高く馬肥ゆる秋」「爽やか」の意味についても要注意
「天高く馬肥ゆる秋」「爽やか」という二つの言葉についてもよく誤用されます。
「天高く馬肥ゆる秋」の本当の意味は、のんびりしたものではなかった! | コトバノ
「爽やか(さわやか)」の意味と使い方に注意 ~「風薫る爽やかな季節となりましたが」はOK? | コトバノ
以上の記事にまとめていますので、参考にしていただければ幸いです。
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