海千山千(うみせんやません)という言葉があります。「社長は海千山千でいらっしゃいますから、さすがですね」と相手を褒めるつもりで使ってしまうと誤用(失礼)になってしまうので注意が必要。今回はこの「海千山千」という言葉について確認してみましょう。
海千山千という言葉の意味と誤用に要注意
海千山千という言葉には海のことも山のこともよく知り尽くしている、つまり、表の事情のみならず裏の事情にも詳しいという意味があります。
海千山千とは、物事の裏も表も知り尽くしているという意味。ものをよく知っていて、したたかでずる賢いことを表す
海千山千とは、物事を単によく知っているのではなく、その裏の事情まで知り尽くしているという意味、ニュアンスとしては「さすがよくご存じですね」という純粋な褒め言葉ではなく「そんなことまで知っているだなんて、悪い知恵が働きますねぇ」という感じになります。つまり、褒め言葉ではなく、ずる賢さやしたたかを表しているわけですね。
海に千年住み、山に千年住んだ蛇は竜になるという中国の故事に由来する言葉。蛇が竜になるのですから、元々は「立派になる」という意味があるのですが、様々なところで暮らし、様々な生き物たちを見ていれば、自然と裏の事情にも詳しくなっていくのは当然。事情を知り尽くした立場だからこそ「ずる賢く」もなれるわけで、褒め言葉として使ってしまうと相手に失礼になってしまう可能性が生じます。
海千山千を使うときは、「ずる賢い、したたか、曲者」という言葉で置き換えても適切かどうかで判断してみると良いでしょう。
海千山千を使ってはいけない例、使っても良い例
海千山千を使うときは「ずる賢い、したたか、曲者」という言葉で置き換えても適切かどうかで判断します。確認してみましょう。
○海千山千のあの政治家は、やっぱり今回の難局も乗り切った。
○資金難に陥った社長も、さすがは海千山千の会話術で、銀行との交渉も上手に行った。
このように使うことは問題がないと言えますね。それに対して、
×幼いころから練習した海千山千のピアノのテクニックで観客を魅了した。
×恩師は海千山千の人生経験があって、僕は一生感謝を忘れないだろう。
と使ってしまうと、違和感のあることがわかります。
長年の経験や、敬意を表すべき相手に対して使ってしまうと問題になります。「○海千山千の政治家」「×海千山千の恩師」という風に短いフレーズで覚えておくと、区別しやすくなるのではないでしょうか。