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「無礼講」の反対語の「慇懃講」、この「慇懃(いんぎん)」「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」の誤用と使い方に注意!

「今夜は無礼講で」という呼びかけで始まる宴席。実際のところはともかく、参加者の地位や身分に関係なく行う宴会で使われる言葉です。無礼講という言葉には今さら説明は必要ないと思いますが、無礼講の反対語が「慇懃講」であるということはご存じでしたでしょうか。今回はこの「慇懃(いんぎん)」という言葉と「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」という言葉について紹介します。

「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」という言葉はどういう意味か

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慇懃無礼(いんぎんぶれい)という言葉はなかなか漢字で書く機会はないかもしれませんが、耳にしたことはあるのではないかと思います。無礼という言葉があることからも想像できる通り「あいつは慇懃無礼な奴だ」とは「礼儀正しいようでいて、あいつは態度がでかくて人を馬鹿にする無礼な奴だ」という意味になります。

「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」とは、礼儀正しそうに見えるけれども態度が大きくて相手を軽んじている様子を表す

慇懃無礼という言葉自体の意味はこれでご理解いただけたと思います。今回問題にしたいのは、「慇懃無礼」という言葉を省略して「慇懃(いんぎん)」と書くケースが多くみられるようになってきたということ。解説します。

「慇懃」とは「礼儀正しく丁寧である」という意味

「一石二鳥」のように熟語を構成している字面を眺めれば何となく意味が想像できるものもありますが、慇懃(いんぎん)は漢字が難しく、字面から意味を推察することは難しいですね。このように字面から意味が判断しづらい熟語は、長く使われるなかで省略や変形を起こしやすい傾向があります。

慇懃無礼とは、礼儀正しそうだけれど心のなかでは相手を馬鹿にしている様子を意味します。これを省略して「慇懃」と書いてしまうとまるで意味が変わってしまうので要注意。慇懃の意味について確認しておきましょう。

「慇懃(いんぎん)」とは心がこもっていて礼儀正しい、丁寧なこと

慇懃とはそれ自体で一つの意味を持つものであり、慇懃無礼を省略した言葉ではないということを知っておくことが大切です。「彼は慇懃無礼だ」と書くのと「彼女は慇懃だ」と書くのとではまるで意味が逆になるということ。どちらかといえば「慇懃無礼」という言葉を使う(聞く)機会の方が多いかと思いますが、この言葉の意味と解釈を間違えると文脈が変わってしまいます。

慇懃無礼という言葉を聞く場面では相手が憤っていることが会話のなかでわかると思いますが、慇懃という言葉にして使ったときは相手が本来の意味で使っているのか省略した意味で(=誤用で)使っているのか慎重に判断する必要があります。また、同様に、自分が使う場面でも相手を混乱させてしまう可能性がありますので、「慇懃無礼」という言葉のみを覚えておき「慇懃」という言葉については言い換え表現(=丁寧、礼儀正しい)を意識した方が無難であると言えるかもしれません。


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