「彼は天気が良くても傘を持って出掛ける奇特な人だ」という表現。どうやら「変わった人(変な人)」という意味で奇特を用いているようですが誤用です。「奇特」の正しい意味、奇特を構成する「奇」という漢字の意味について確認しておきましょう。
「奇特な人」は変な人ではない ~奇特の正しい意味とは
「あなたは奇特な人ですね」と言われてイラッとしてしまうのは意味を誤解している証拠(言った相手が間違っている可能性もありますが)。「奇特な人」には変わった人という意味はありません。
「奇特」とは行いが感心な様子のこと。けなげ、殊勝と同じ意味になる
奇特とは行いが感心である様子を表します。「一生懸命働いて貯めたお金を故郷のお母さんに仕送りしている。彼は若いのに奇特な人だ」と書いたときは「仕送りという優れた行動を行うとは感心な人だ」という意味になります。人を形容するのに奇特という言葉を用いると「立派」というニュアンスを伝える誉め言葉になるわけですね。
「奇」という字を辞書で引くと「あやしい、へんな」という意味以外に「めずらしい、すぐれた」という意味のあることがわかります。奇観、奇才、奇行などの熟語は、すべてその状態が秀でたものであることを表します。「奇特」の「奇」もまた同様に「特に立派であること」を伝えているわけですね。
文化庁の国語に関する世論調査では「奇特」を半分以上の人が間違っていた
平成14年に行われた文化庁の国語に関する世論調査では実に半分以上の人が「奇特」の意味を間違って覚えていました。
平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について怪奇、猟奇など「奇」のつく熟語には怪しさや変な様相を伝えるものもあります。その影響もあってか「奇特」という言葉は本来の肯定的な意味を大きく離れて「変な人」と誤用されてしまうケースも多く見受けられるようになってしまいました。褒めているのに褒められているのに、どちらかの理解が足らず反対の意味で伝わってしまっては残念な結果になってしまいます。相手の行為を肯定的に評価する場合は「立派」という言葉を使った方が無難かもしれませんね。
「奇特」の誤用は週刊少年ジャンプから始まった?
かつて週刊少年ジャンプに「ジャンプ放送局」という読者投稿のコーナーがあり、その中にあった奇特人間大賞という企画から奇特の誤用が始まったという説があるそうです。
82年から95年まで続き、読者投稿を集めたものとしては当時最長となる24巻まで単行本も発行されました。最盛期で毎週4万通というはがきの数も桁違い。その中で草創期を除き常に人気ナンバーワンだったコーナーが「奇特人間大賞」。一口に言えば「身近にいる変なやつ大集合」というコンセプトで、このコーナーが与えたインパクトがあまりにも強かったのではないか、というわけです
話のネタにこんなことを覚えておくのも面白いかもしれませんね。余談ですがこのジャンプ放送局、僕も何度か投稿したことがありますが一度も掲載されたことはありませんでした。