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「世間ずれ」の意味と誤用 ~「世間ずれ」の反対語は「世間知らず」

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「彼は世間ずれしている」「彼女は世間ずれしていないよね」という表現が、誤った意味で使われることが増えてきています。世間ずれをしている人とはどんな人なのか、そして「世間ずれ」の意味を確認したうえで、反対語が「世間ずれ」になる理由を理解しておきましょう。

「世間ずれ」は「世間とずれている、非常識」という意味ではない

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世間ずれという言葉を音で聞くと、世間からずれていて常識から距離がある(=非常識)という印象を抱かれる方もいるでしょう。しかし、世間ずれの意味を非常識と考えるのは誤用です。

世間ずれの意味は、悪賢い。
苦労や経験を重ねて物事の裏表を知った結果を表している。

世間ずれとは、様々な苦労を重ねてきたなかで、裏表を知り尽くした状態を表します。ポイントは、苦労の末に裏も表も知った結果「悪賢くなった」ということ。世間からずれてモノを知らないのではなく、モノを知りすぎたがために裏事情にまで詳しくなったというわけです。「彼は世間ずれしている」という文章を「ふつうの人では思いつくこともないような発想を持っている」と褒め言葉として使っているケースも見受けますが、世間ずれという言葉に裏のこともよく知っているという意味があることを知れば、これも誤用であることが理解できます。

世間ずれの「ずれ」とは何か

社会で経験する様々な摩擦や人との接触に慣れ,その結果,元々の純真さを失ってずる賢くなる,というのが「世間ずれ」です。

引用元:文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」

世間ずれの「ずれ」とは、磨り減るということ。新しい靴に馴染まないうちに起きる靴ずれと同じ意味になります。「ずれている」のではなく、生きてきたなかで元来の純真さが磨り減っていったと考えれば、次第に「悪賢さを身につけた」という状況になったことが想像できるのではないでしょうか。

世間ずれの反対語は「世間知らず」 ~文化庁の調査結果を確認してみる

世情に疎い、ものを知らないという意味で世間知らずを使うのは誤用でした。世間知らずという言葉はその逆で、物事をよく知っている(ただし裏事情にまで詳しくなりすぎた)意味になります。つまり、世間ずれの反対語は「世間知らず」。裏も表も知り尽くした状態の逆にあるのはモノを知らないというわけですね。

文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」
国語に関する世論調査 …

文化庁の国語に関する世論調査では3割以上の人が世間ずれを「世の中の考えから外れている」という意味で理解していることがわかりました。特に30代以下では過半数の人が誤った認識をしています。

彼は世間ずれしているから,この仕事には合わないだろう。」というような文では,発信者(送り手)と受信者(受け手)のそれぞれが別の意味で捉えていても,文脈による違和感がないため,話がスムーズに進んでしまうところがあります。

リンク元の文化庁ホームページにある通り、世間ずれという言葉は文脈によってはお互いが誤解したままで意味が通じてしまう可能性があります。今後も誤用例が一般化していくことを思えば、状況によって置き換え表現を用いる工夫などを行った方が良いのかもしれませんね。