「生きざま」という言葉を目上の人に使ってはいけない ~「生きざま」の誤用とその理由
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最終更新日:2014/03/18
140文字で変わる表現力 敬意, 生きざま, 誤用
「先輩の生きざまに感動しました」という表現をよく見かけます。この「生き様(生きざま)」という言葉は目上の人に使うと失礼な意味にになってしまう可能性があります。今回は「生きざま」という言葉の成り立ちについて考えてみます。
「生きざま」という言葉を目上の人に使うと不遜になる理由
「先輩の生き方を見習いたい、学びとしたい」という意味合いで「生きざまから学ぶ」という表現が用いられることがあります。「生きざま」の「ざま」は「様子・~のさま」の音が濁ったもの。濁らないでも意味を成す言葉に濁点がつくと、語感の悪さから否定的な意味合いを表すことがあるので注意が必要です。
「生きざま」の「ざま」は否定的な意味
敬意を示すべき相手の生き方や人生を「生きざま」と書くと失礼にあたる
「生きざま」の「ざま」は否定的な意味があり、敬意を示すべき方の生き方や人生を「生きざま」と書くと失礼にあたる。「生きざま」という言葉は、元々「死にざま」という言葉があったため、その対を成す意味合いで発生したといわれています。死にざまという言葉に穏やかな最期を想像することはないことからも、この「ざま」という言葉の否定的な意味合いがご理解いただけるのではないでしょうか。
「無様(ぶざま)な人生だ」「ざまあみろ」など、「ざま」がつく言葉にはすべてネガティブなイメージが伴います。先輩や上司、目上の方など敬意を表すべき方の人生を「生きざま」と書いてしまうと不遜になる所以です。
「生きざま」という言葉はどんな言葉に置き換えるべきか
「先生の生きざまをしっかり学びたい」と書くときは、つまり、その人物が苦難を乗り越えてきた方法やエピソードを知りたいということ。「先生の壮絶な人生を語っていただきたい」「波乱万丈の人生から多くのことを学びたい」など、生きざまと書かず人生という言葉を使い、人生の前に「壮絶な」「波乱万丈の」という言葉を使うと良いでしょう。
「生きざま」という言葉の使い方は一般化しつつあり、ここで説明した誤用も許容されるケースが増えてきています。ただし、自らの人生や考え方、信念を表現するときに「生きざま」と表現するのは違和感がありますので、注意してほしいところです。
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