「深い絆」という言葉は誤用 ~目指すのは強い絆
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最終更新日:2014/03/18
140文字で変わる表現力 強い絆, 深い絆, 誤用
東日本大震災のあった2011年には日本漢字能力検定協会の今年の漢字に選ばれた「絆」。
ひととひととの繋がりを示す綺麗な意味として使われるこの漢字はよく「絆を深める」といった表現で使われることが多いのですが、語源を調べればその使い方が誤りであることに気がつきます。
絆の語源 ~だから絆を深くすることは出来ない
絆(きずな、きづな)は、本来は、犬・馬・鷹などの家畜を、通りがかりの立木につないでおくための綱。しがらみ、呪縛、束縛の意味に使われていた。「ほだし」、「ほだす」ともいう。
人と人との結びつき、支え合いや助け合いを指すようになったのは、比較的最近である。引用元:絆 – Wikipedia
元々は「束縛する」意味であったことが「絆」の由来。意外なことに、支え合いや結びつきの意味で使われるようになったのは最近のことだったのですね。
そして、「絆」という字は糸偏であることからも理解出来る通り、「紐(ひも)」そのもののイメージです。たとえば犬の散歩で使うリード。「深い紐」「深いリード」という表現は、やはり違和感を覚えるのではないでしょうか? ぐいぐいと引っ張っていくような犬がいて、飼い主がその紐(リード)を持つ。その場合の紐は「深い」のではなく、「強い」と書くのが自然なはず。「絆」も同じことで、これを「深い絆」と書くことは誤りとなります。
深くなるのは溝ばかり
強い絆の対になる表現に「深い溝」があります。絆を深めることは出来ませんが、ほんの誤解で相手との溝を深めてしまうのは一瞬。深さを目指すよりも強さのある、そんな絆でありたいものですね。
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