役不足と力不足の使い分け ~挨拶やスピーチのときによくある間違い
「役不足ではございますが、この大役、務めさせていただきます」
こんな言い回しをつい使ってしまうのですが、実はこれ、誤用。「こんなつまらない仕事、俺様にまかせるとはねぇ。まぁ、やってあげるけどね」なんてニュアンスで表現していることになってしまいます。
「役に立つ」という言葉があるので、その意味で使ってしまいがちですね。感覚としては(役に立てないかもしれませんが、頑張ります)という意味で伝えたいのだということはわかります。
役不足と力不足の違い ~自分はもっと出来る人間!?
上述した誤用の場合は役不足を力不足と置き換えることで、正しい表現になります。
役不足とは、与えられた役割がその実力よりも軽すぎるという意味
控えめに自分の実力を言うときは「力不足」という言葉を使う
「力不足ですが、頑張ります(=ワタクシの力では足りないかもしれませんが、がんばります)」、これで謙虚謙遜を表す、適切な表現になりました。
役不足は、どんな時に使う?
上でまとめた通り、役不足とは、その人の本来持っている実力に対して与える仕事・役割が軽すぎる意味です。なので、何か仕事や役割を誰かにお願いする「役不足かもしれませんが、この仕事、引き受けていただけないでしょうか?(=あなたには簡単すぎるお仕事で恐縮ですが、やってくれませんか?)」というような場面で使うと覚えておくといいでしょう。
こんなことを自分に頼んでくるなんて、役不足だねぇ。
江戸っ子の啖呵にも似たそんな自信に満ちた言葉、憧れないわけでもないのですが、小心者の自分が使う日はなかなかやってきそうにありません…。
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