更迭(こうてつ)、解任、辞任の意味の違いと使い分けについて ~クビにするのはどの言葉?
たとえば大臣が不祥事を起こしたりすると、「首相はA大臣を更迭(こうてつ)した」と報道されることがあります。
この「更迭」とはどういう意味なのでしょうか。また、似たような意味の言葉に「解任」や「辞任」がありますが、どのように使い分けたら良いのでしょうか? 今回は「更迭」「解任」「辞任」という3つの言葉について、意味と使い分けをまとめます。
「更迭」「解任」「辞任」の意味の違いと使い分け、クビにする意味を持つ言葉はどれ?

ひとが地位や役職を離れていくという点では「更迭」も「解任」も「辞任」も同じですが、誰の意思によって地位を離れることになったのかというところと前任が地位を離れた後の、その後の状況によって使い方が異なります。
「更迭」は、ある地位に就いている者を他の者にかえること
「解任」は、任務、職務をやめさせること
「辞任」は、職務を自分からやめること
「更迭」は、ある地位に就いている者を他の者にかえることという意味になります。
「更」という字には「新しくなる、いれかわる」という意味があり、「迭」という字には「いれかわる、かわりあう」という意味があります。二つの漢字が組み合わさって、「更迭」は「新しく入れ替わる」という意味を成しているわけですね。
「入れ替わり立ち替わり、お客さんがやってきた」という状況を想像してみてください。この場合、最初にいたお客さんが退店した後、すぐにまた次のお客さんがやってきているのが浮かぶのではないかと思います。「更迭」も同じ。地位や役職を剥奪された人の次に、その後任があてがわれるところまでの一連の流れが更迭の使われる状況、次の来ることが決まっています。
不祥事などがあった場合に使われることが多いので、事実上の「クビ」と同じ意味。「失敗ばかりでダメな奴め、おまえはクビだー。かわりにあいつを新しく任命することにする」というニュアンスが含まれています。そして、更迭の行為主は他人(上司など)、「クビにして交替させた」という意味です。
例)首相は大臣を更迭した(から、次の大臣をあてがう)
「解任」と「辞任」の意味の違いについて
「解任」は、任務、職務をやめさせることという意味になります。
任務を解くと書いて「解任」ですね。クビというニュアンスでも使いますが、「長らくの海外勤務の任を解いた」という表現のときは、否定的な意味にはなりません。また「更迭」とは違って、必ずしも後任が決まっているわけでもありません。解任の行為主は他人、「やめさせた」という意味です。
例)任期が終わったので理事を解任した
例)不祥事をおこしたので取締役を解任した
「辞任」の意味について
「辞任」は、職務を自分からやめるという意味です。
任務を辞すると書いて「辞任」、辞する(やめる)判断は自ら行いますよね。更迭や解任と違うのはその点。自らその職務を離れていくわけですから、この場合、後任が決まっているかどうかということについては問題とはなりません。だから辞任の行為主は本人、「やめる」という意味になります。
例)社長職を辞任することにした
「更迭」「解任」「辞任」とも、地位を去っていく状況は同じですが、そこに至るまでとその後の状況が異なります。ニュースなどでもよく登場する言葉ですので、単語の違いを意識してみると、その背景を想像することができるようになります。
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