「尻をまくる」という言葉があります。「追い詰められて、彼はとうとう尻をまくって逃げ出した」という風にお尻を出して逃げていくようなイメージで使われることがありますが、この用法は誤り。「尻をまくる」という言葉の誤用と正しい使い方、読み方についてまとめてみましょう。
「尻をまくる」にはお尻を出して逃げていく意味はない
尻をまくるという言葉にはお尻を出して逃げ出すという意味はないので注意してください。
「尻をまくる」には逃げ出すという意味はない。
居直って相手にふてぶてしい態度をとるという意味。
「尻をまくる」という言葉の正しい意味を理解するためには、時代劇やヤクザ映画のワンシーンを思い浮かべてみると良いでしょう。乱暴な言葉遣いをしながら、着物の裾を捲って「おいおい、てめぇ、俺に喧嘩を売ってんのかい?」などと凄んでいるシーンですね。
それまで穏やかに会話をしていたのに、どうしても意思疎通を行うことができない。すると相手は逆ギレをしたようになって凄んでくることがあります。これが「尻をまくっている」状態。つまり「尻をまくる」とは態度を一変させ、相手にふてぶてしい態度をとることを意味します。
大人しく聞いてりゃ調子に乗りやがって…… たとえば、こんな言葉の出てくる瞬間が「尻をまくって」います。「それまで黙って聞いていた彼は、尻をまくって反論に出た」という使い方が正しくて、「黙って聞いていた彼は、尻をまくって逃げ出した」だと誤りとなりますので気を付けましょう。
尻をまくるに逃げ出す意味がないのであれば、尻を出して逃げ出すことを何と言う?
尻をまくるには逃げ出すという意味はありません。では、お尻を出して逃げ出すような状態のことは何と表現すれば良いのでしょうか。正解は「尻に帆をかける」です。
着るものもとりあえず、慌てて逃げ出していく後ろ姿を想像してください。逃げ出した人はふんどし姿のままで飛び出していくのですが、このとき、走っているので風を含んだふんどしが帆をかけたように広がりを見せます。この姿に由来して「尻に帆をかける」という言葉は慌てて逃げ出すという意味を持つようになりました。
尻をまくるの「尻」は「しり」と読むのか「けつ」と読むのか
尻をまくるの「尻」は「しり」とも「けつ」とも読めます。どちらが正しくて誤りということはありません。言葉が乱暴な印象を与えすぎると思えば「しり」と読んだ方が無難かもしれませんが、そもそもこの「尻をまくる」という言葉は「居直ってふてぶてしい態度をとる」という意味でした。あえて「けつ」と読んだ方が、その雰囲気も伝えられるかもしれませんが、このあたりは、それぞれの判断がありそうですね。