「爽やか(さわやか)」の意味と使い方に注意 ~「風薫る爽やかな季節となりましたが」はOK?
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最終更新日:2016/04/14
140文字で変わる表現力 時候の挨拶.季語
時候の挨拶は手紙の書き出しで用いる礼儀文ですが、四季の移ろいを伝え相手を思い遣る一文でもあります。凍てつくような冬を抜け、緑の眩しい頃になってくると、私たちは「爽やか(さわやか)」という言葉をよく用いるようになりますが、今日はこの「爽やか(さわやか)」を使う時期について考えてみたいと思います。
「風薫る爽やかな季節」という表現は適切か ~「爽やか」は秋の季語
暑くもなく寒くもない、エネルギーに満ちた春や初夏。私たちはその過ごしやすい時期を表現するのに「爽やか(さわやか)」という言葉をよく使いますが、実は「爽やか(さわやか)」という言葉は秋の季語なのでした。
「爽やか(さわやか)」は秋の季語。
春や夏を表現するときには用いない(俳句の原則)
俳句の考え方では、「爽やか(さわやか)」は秋を伝える季語になります。したがって、「風薫る爽やかな季節となりましたが」という書き出しで春や夏を表現するのは好ましくないということがわかります。ただし、あくまでもこれは俳句の世界での原則論。使ってはいけないと考えるよりも、「爽やか(さわやか)」は詩歌の世界や言葉に敏感な方、あるいは目上や年上の方に書き認める(したためる)時には用いないようにしたいという程度の認識で良いでしょう。
春や初夏を伝える時候の挨拶に無難なものは何か
「爽やか(さわやか)」は春や夏に用いる時候の挨拶として、積極的には用いない方が良いということをお伝えしました。では、春や初夏に用いる表現として無難なものには何があるでしょうか。
春は「のどか、うららか」。
初夏には「心地よい、清々しい(すがすがしい)」
などを用いる
春は「のどか、うららか」、初夏には「心地よい、清々しい(すがすがしい)を時候の挨拶として用いる、「爽やか(さわやか)」はできるだけ用いないようにする。イメージとして、春はのんびりとした言葉を。夏は清涼感のある言葉を用いるが、例外的に爽やかは用いないと認識しておけば覚えやすいのではないかと思います。
言葉は時代と共に変化しますし、「こんな風に使ってはダメなんですよ」と責めるのではなく、知っている側が知らない側を許容できるようでありたいですね。
*2014/4/10追記
秋を伝えるエピソードとして、「天高く馬肥ゆる秋」という故事に関する記事を追加しています。
「天高く馬肥ゆる秋」の本当の意味は、のんびりしたものではなかった! | コトバノ
実りの季節でもある秋は、それが争いの原因となることもありました。あわせて、こちらの記事もご覧いただけると幸いです。
*2016/4/14追記
「秋味」という言葉についても誤用されていることが多いようです。
「秋味(あきあじ)といえば秋刀魚だよね」という表現が誤りである理由 ~秋味とは | コトバノ
秋に関する日本語のあれこれ。これからも随時追加して紹介してまいりたいと思います。
▼関連の深いこちらの記事もどうぞ▼
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