「高い席から失礼かと存じますが」「僭越ながら」と言ってはいけない理由 ~挨拶やスピーチで注意することでは、「僭越ながら」という言葉は使わないほうがいいということを紹介しました。挨拶では、できれば使わない方がいいと思われる表現が他にもいくつか存在します。今日はそのなかから「ご多忙のところ」という言葉について考えてみます。
ご多忙とご多用の違い ~ご多用のところを使う方が良い
ご多忙とご多用、意味としての違いは大きくありません。ただ「多忙な毎日」は聞いたことがあっても「多用な毎日」はあまり聞いたことがありませんよね。多用という言葉は、冠婚葬祭の挨拶などフォーマルな場で使われることの多い改まった表現であると言えます。
では、どうして「ご多忙」という表現は使わないほうがいいのか。
「忙」という字は心を亡(ほろ)ぼすと書くから
…という話をする人が多いから「ご多忙」は使わないほうが無難
結論なのに曖昧な書き方になっていることについては理由があります。
「ご多忙」の「忙」という字は確かに心を亡くす・心を亡ぼすと書きますが、それが理由で「忙」という字を使うことが相手に対して失礼にあたるということはありません。ただ、「忙」という字のエピソードが一般的になってきたため、この言葉を使う、使われることに神経質になる人が増えているのも事実。
ならば、減点になりかねない「多忙」を使わずに「多用」という表現に改めた方が無難であると考えます。
「忙」という字を使ったからといって「失礼だ!」と不快感を示されることはまずないでしょう。それでも、あえて「多忙」を「多用」と置き換えることによって、「言葉に配慮がある」という評価を得られることがあるかもしれませんよね。「多忙と多用」の知識を知っている人同士がその挨拶に触れ合うと、そこには「わかってますね」という空気が生まれます。これ見よがしに知識を押し付けるのではなく、「わかっている」という相互の「間(ま)」が生まれると、双方の信頼や期待は一気に高まります。
履歴書や職務経歴書を送るときにもひと言添えたい
就職や転職活動の際に、履歴書や職務履歴書を郵送することがあります。必要な書類はその2点であったとしても、やはりマナーとして送り状は添えるべき。そしてその送り状の最後には「ご多用のところ恐縮ではございますが、ご検討よろしくお願い申し上げます」という言葉で締めくくると印象は良いでしょうね。
ご多忙とご多用、その違いを知っている人同士の「間(ま)」。そのほんの少しの違いが人生を左右することがある…というのは、大袈裟でしょうか。
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